不公平感は人工知能で解消できるか
世の中は理不尽で不公平なことだらけですが、これを技術で解消することは可能でしょうか。
生まれが貧しいために努力が報われない人、たまたま配属された部署の上司とそりがあわない人。不公平だなあと思うことはよくあります。
研究の世界でも、良い仕事をすれば評価されるかというと、なかなかそういうわけにもいきません。評価するのは所詮は少数の人であることがほとんどですから、それまでの人間関係や組織の大小といったバイアスが入ることが多々あります。悔しいですね。
こういった理不尽なことの原因の大半は、人間の能力の限界に起因しているように思います。人が人を正しく評価することができないことや、人は自分の都合を優先させるといったことです。
人がどんなに頑張っても自動車よりも速く走ることができないように、人事評価を適切に行なったり、公平無私に意思決定をすることは人間の能力の限界を超えています。
では機械に任せればよさそうですが、適切に人や成果を評価することを目指した研究はあまり目立ちません。おそらく倫理的な観点で歯止めがかかっている部分もあるでしょう。このテーマを扱った論文は少なくともメインストリームになっていません。
ですから、あしたからテクノロジーで不公平感を解決できるという状況ではありません。また、研究を始めたとしても、決して簡単に実現できるたぐいのものではありません。
評価の元となるデータをどう集めるかや、非構造なデータをどう解析するかという情報工学的な課題に加えて、「どうなれば公平なのか」という人文科学的な議論が必要になります。前の記事に書いたように「価値は人が決める」のであれば、ここは機械任せにはできません。
理不尽さや不公平であることは、解決可能な問題なのか、それとも原理的に社会とは切り離せないものなのか、人文科学や社会科学では議論の蓄積がなされてきたテーマだと思います。これを情報工学的なアプローチで、切り込んでいき原因や解決策を提案するのも面白そうです。